私が生まれた翌年、父は脱サラで商売を始めました。
父がたった一人で始めた小さな小さな商売ですが、まずまず順調に成長していきました。
でも父には心の休まる暇がありませんでした。社員のために心を砕いたり、事業拡大のタイミングを計ったり、ときには非情な決断をして自分を責めたり...
父の周りにはたくさん人がいるのに、なぜ一人で悩むのか。
子供の頃、私の目に映った父の姿は不思議でなりませんでした。
大学卒業後、1ヶ月もしないうちに父が倒れました。私は就職したばかりの会社を辞め、地元に戻りました。
父の病気はすい臓がん。5月半ばに手術をして6月下旬に亡くなりました。家業は弟が継ぎましたが、会社は大混乱し、先行きは不透明でした。
混乱とは裏腹に、父の堅実な経営のおかげで会社の価値はそれなりのものになっていて、当時の私にとってはびっくりする額の相続税を払いました。そして、その計算の考え方も腑に落ちない不思議なものでした。
地元に戻った私は市役所の採用試験を受け、税務課に配属されました。わかりにくい税制と知らないと不利になることの多さに圧倒されました。相続税の申告で感じた矛盾とあいまって、税金への興味は膨らんでいきます。
27歳、結婚退職を機に、税理士になることを決意。
会計事務所で経験を積みながら、平成13年税理士試験に合格。
平成19年に植村税理士事務所を開業しました。
父のような経営者のよき理解者になりたい、私の夢の第一歩がスタートしました。 |